3日目 アーグラーなのだ
今日はアーグラーに向かう日である。朝起きるとホテルマンがやってきて朝食を何にするか聞いてきた。同時にフロントから電話がかかってきたが案の定聞き取れず、とぼけた返答をしているうちに切れた。その後屋上へ案内されて朝食を食べる。間に味のついたおかずがはさんであるナンのようなものが出てきた。なかなか美味い。食べた後タクシーに乗り(前日ホテルに頼んでいた)、Hazrat Nizamuddin駅に向かう。インドの狭い通りを人をかきわけつつ進む。駅に向かう途中、運転手は突然道の真ん中で車を停め、ハトにえさをやる、と言って出ていった。なるほど、交差点の真ん中の安全地帯にハトが群れていて、運転手のおっさんはハトにえさをやり始めた。なんなんだよこの国。やがて運転手が戻ってきて再び発進、しばらくして駅に着いた。運転手はチップを要求してきたが、軽くいなしてプラットフォームに向かう。
昨日の夕食のせいか、腹がやたら痛くなってきた。乗る列車の番号が電光掲示板にあることを確認した後、トイレに向かう。トイレの位置はすぐわかったのだが、並んでいたので待つことに。10分くらいたった後、ようやく中の人が出てきて入ることができた。待っている途中、個室を仕切る壁の下から水が溢れてきたので、中はどんな状態なのか心配だったが、入ってみると床は水浸し、洋式の便器はびしょ濡れというさんざんな有様であった。しかし腹が痛いとそんなことは気にならない。はやく便器に座ることしか頭にない。便器にすわると尻がぬれた。用を足した後は汚いバケツで水をくみ、洗浄した。その間部屋を見回すと汚い壁やらゴミやらが目に入ったが、今はモノを出した時の開放感にあふれており、気にならない。
トイレから出てプラットフォームで列車を待っていたら、裁縫道具セットをもったインド人のおっさんがよってきた。すると、僕の目の前で突然靴を触り、修理を始めた。列車の待ち時間に修繕をしてあげる商売なのだろう。しかし、いきなり外国人の旅行者の靴に触り、脱がしてくるというのはすさまじい。断ろうとした時にはすでに靴を脱がされていた。最初は右足のほうの靴を修繕していたが、そのうち別の裁縫道具をもったおっさんがやってきて、左足のほうも脱がされて修繕を始められてしまった。確かに僕の靴は縫い目が破れていたので直してくれるのは有難いが、はんば強引に修繕してもらうというのは気分が悪い。そんな中乗る列車が到着したので、修繕の終わった靴を履いたら、片方のインド人に200ルピー(インドの物価からすれば、かなり高い)を渡してさっさと立ち去ろうとしたが、あろうことかもう片方のインド人も200ルピーを要求してきた。まったく図々しい。しょうがないので200ルピーをさっさと払い、我々の乗るAC3等車両を探す。ドアの横には紙が貼ってあり、どこに誰が乗るかが記載されていた。しかし最初の列車なので座席がどこなのかよくわからない。結局、座席は1人だけ別車両であった。座席がわかるまで2回ほどインド人に聞くはめになった。また、AC3等は6人座席が向かい合うように設置されているが、この6つの席のどこに座るかは厳格に守らないらしく、我々の乗る席に別のインド人がいたが、その人はどこうとせず、我々はその6人座席のうち空いているところに適当に座ることになった。
アーグラーまでの列車は快適なものであった。窓を眺めつつ見送りの品のロングフィッシュソーセージを食べた。乗車中、窓の風景を見て思うことは、列車のまわりはひたすら平地で山がなく、列車がトンネルを通ることは1度もなく、カーブを曲がることさえそうそうない、ということであった。そうのうち車掌がやってきて、チケットとパスポートを見せたところ問題なくチケットにチェックして去っていった。あとは降りるだけである。
いつ着くのか、皆で注意深く外を見ていると、後輩がAGRA(アーグラー)の表示があると言ってきた。AGRA CANTT駅に到着である。インドの列車は車内アナウンスもなく、時刻通りに駅に着くこともないので、駅に着いたかどうかは窓の外を見るしか無い。
無事駅に着き、駅を出るとタクシーの運転手が何人かよってきた。そのうち1人の運転手に頼んでタージマハルの近くにある我々が泊まる予定のホテルの近くまで乗っけてもらうことに。その後はタージマハルの方角まで歩く。ホテルの近辺は狭い通りしかなく、リクシャーではないタクシーは入っていけないのだそうだ。
ホテルに無事到着し、1泊頼んで最上階のタージマハルが見える部屋に通される。いくらか休憩した後、AGRA FORT(アーグラー城)に行く事にする。一旦タージマハルの門の近くまで歩き、そこからアーグラー城まで歩く。タージマハルに向かう途中にはレストランがあったのでそこで昼飯を食べ、子供の物売りが寄ってくるタージマハル西門のそばを通過する。そして馬車の走る道路をひたすら歩くとアーグラー城に着いた。
アーグラー城は赤い石材でできた城だった。チケットを買って入場する。入場ゲートには金属探知機があり、それをくぐっていく。この金属探知機は反応しても係員は気にしないようだ。アーグラー城は探索のしがいがある構造で、なかなか広い。赤い壁が印象的である。そんな中、1年Iが現地の少年につきまとわれていた。スマートフォンを使わせてあげたら喜んだらしい。
アーグラー城を出てオートリキシャーに乗る。乗るときに先ほどの少年がオートリキシャーに名残惜しいように捕まってきたが、かまわず発車する。乗ってる途中、運転手がルピーではなくドルで払え、と要求してきた。値段交渉のとき、金の単位を確認していなかった。なんだかんだでドルで払うことになる。疲れきってホテルに戻り、近くのレストランで夕食を食べる。夜のアーグラーはとにかくうるさい。夜店がならんでいるが、この中を散策して買い食いするのは台湾のそれよりよっぽど勇気が必要である。結局話しかけてくるリクシャーの鬱陶しさにかなわず、逃げるようにしてホテルに戻るのであった。