0日目 インドに行く事にした
インドに行く事にした。特に深い理由はない。強いて理由をあげるとすれば、大震災以降いろいろなことがあり、日本にこのままいていいのか、とにかく何処か他の国に行かなければならないという焦燥感に駆られたからである。そしてインドを選んだ理由は、どうせなら日本とは似ても似つかない国に行ってみたいから、というものである。なにしろ仏教の発祥の地であってヒンドゥー教とイスラム教が混ざり合い、牛が街中を歩きまわり、ガンジス河で人々は口をすすぎ、ちょっと立ち止まれば物乞いが近寄ってくるワケノワカラナイ混沌の国なのだ。インドに行って2週間耐えられればたいていの国には行けるだろう。
そんなこんなで、北インドを2週間旅行する計画を春合宿で提案した。正直、人数はそんなに集まらないだろうと思ったが、2年1人と1年2人がインド行きを志願してくれた。自分を含めて4人である。グループで旅するならちょうどいい人数である。これでインドに行く人間は集まったので、それから具体的な計画を立てていった。
インドでカルチャーショックを思う存分感じてこよう、と思っても春合宿だし、無事に帰らなければならない。なので、大雑把な計画を立て、好きなように放浪するような旅のスタイルではなく、日程はきちんと決め、航空券や乗る列車も日本であらかじめとっておくことにした。海外旅行経験が日本と同じくらいに過ごしやすかった台湾しかなかったので、インドで放浪の旅などできる自信がなかったのも大きな理由である。
2012年の秋ごろに地球の歩き方を買い、12月から航空券の手配を行い、年明けに列車の手配をした。どんな旅でも計画段階が一番長いものである。無事に帰れるよう、余裕を持った、石橋を叩いて渡るような日程を組んだ。しかし、実際にスケジュールを組んでも現地に行ってみないとどうなるかわからない。どれだけ他の人の体験談を読んでも、なかなか現実感がわかないのである。インドは自分にとってまったく未知の世界なのだ。しかし旅の準備は整ったのだからもう行くしかない、という気概で行くことにした。
ところで、列車等々の手配はインドにある現地の旅行会社にお願いしたのだが、その旅行会社からの返信のメールにこんな一文があった。
「インド人と日本人では、モラルの観点が違います。」
うーむ、なんだかすごい旅になりそうだ。