あなたはは資本家を憲兵に突き出すことに決めた。
(資本家)「ちょっと待ってくれ。私は好事家があの技術を独占していることに対して思う事はあれど、小夜を破壊する必要はないじゃないか!?」
そう喚く彼は憲兵に連れて行かれた。
後に残されたのは、騒然とする招待客とほくそ笑みながら会場を立ち去る一人の男だった。
(オーナー)「オカルト信者の狂人と、人形に取り憑かれた奇人を排斥できたな。なんと素晴らしいことか……。」
資本家は拘置所で小さくボヤく
(資本家)「素晴らしい技術が失われてしまう。あぁ、帝国の夜明けがまた遠ざかってしまった。」
真犯人は...カフェのオーナーはいつも通り静かに日常に戻った


事件の真相を辿っていきましょう。

上の情報シートを見てください。正しく情報を整理出来れば、このようになります。
考えるべきは、いつ小夜が破壊されたかです。

小夜のメモリーデータの記録は、大きな声を聞いたというところで止まっています。
この大きな声が何時に聞こえたものなのかがわかれば、犯行時刻がわかるはずです。
女給によると19:30に喧嘩を仲裁しており大きな声が聞こえました。
しかし、その声は社交場に届いていなかったようです。

つまり、社交場より奥にある舞台裏の内倉庫にも届かなかったと考えられます。
ではなぜ大きな声が認識されたのでしょうか?

ここで、この新聞の記載に注目してください。
新聞記事によれば、小夜は音の区別が不得手なようです。
プロローグの小夜の発言も思い返してみてください。
小夜は好事家が扉を開ける音を好事家の独り言と聞き間違えていました。
これらの情報を合わせれば、小夜は物音と人の声を混同していたと想像できます。
そう!メモリーデータに残っていた“大きな声”はリハーサルの際、大音量で会場中に響き渡ったオルゴールだったのです。
大型オルゴールは内倉庫の裏側にありますから、これならば小夜も聞いているはずです。
そこで、喧嘩ではなく、リハーサルの時間に注目してみましょう。
事件はリハーサルを行った20:00以降に起きたことになりますから、好事家と資本家は犯行不能となるわけです。

また、あなたに事件の概要を説明してくれたスタッフの説明を思いだしてください。
スタッフは、21:00まで舞台裏を閉鎖して、舞台装置の修理をしていたのでした。
これにはどのくらいの時間がかかっていたのでしょうか?
資本家は、リハーサルの後30分ほどスタッフが荷物を運ぶ音を社交場で聞いたのだそうです。
リハーサルについて思い出してみると、音響装置に関するエラーが発見されましたのでした。
これらの情報を頭に入れたうえで、改めて会場図を眺めてみてください。
このスタッフたちは外倉庫から荷物を運び、30分間修理をしており、舞台裏は封鎖されていたとわかります。
つまり、20:30以降は内倉庫に立ち入ることはできなかったはずなので、犯行不能です。
そのため、犯行時刻は20:00~20:30とわかります。
その時刻に犯行可能な人物は誰だったのでしょうか?
さらに、抜き取られたメモリーデータの所在を考えてみてください。
スタッフは、21:00以降部屋の移動は禁止されたと話していました。
つまり、犯行時刻~21:00までに犯人は社交場に立ち寄っているはずです。これが行えるのは誰なのでしょうか?
つまり、真犯人はカフェのオーナーだったのです。

本事件のオーナーは、実は病的なまでに自らの優越性を保持しようとしています。
定職に就かず成立するかも分からない絡繰り弄りに没頭する好事家は、
そこそこの規模を持つカフェーのオーナーという恵まれた職に就くオーナーにとっては疑いようもなく社会的地位が低い人物であり、
そんな人物と接し悩みを聞いてあげることによって相対的に自分の優越性を確認していたのです。しかし、好事家の努力は無駄ではありませんでした。
結果として好事家は、オーナーが内心「絡繰り弄り」とバカにしていたその執着は見事に大成し、
あろうことか由緒正しいホテルでのお披露目会を行うなどと言い始め、混乱と嫉妬心がオーナーを襲うことになったのです。
好事家の華々しい舞台を滅茶苦茶にしてやりたいという思いと、
外面で振舞っているうちに僅かに抱いていた「良い人間」という無意識下の自己矛盾を解決するために、
「異常な精神状態に陥っている好事家を救済する」という歪な正当化を行い今回の凶行に走った……
これがこの事件の真相です。