1.よいアンブシュア
・アンブシュアとは
・脱力と息の効率化
・スマイル・アンブシュア
・のどの脱力
アンブシュアという言葉を導入してみましょう。アンブシュアは管楽器を吹くときの口周りの形や状態、機能を意味します。ここではケーナを吹くときの口周りの状態のこととして捉えてください。
ケーナを吹くときはどのようなアンブシュアを作ればよいのでしょうか。
結論から言うと、よいアンブシュアとは脱力したアンブシュアです。何気なくただ口を閉じているときのような脱力具合で吹かなければなりません。脱力をして吹くことで唇や口周りを柔軟に動かし、表現力のある演奏をすることができます。
そもそもなぜ脱力せずに力んでしまうのでしょうか。力んでしまう理由には前回お話しした息のスピードが関係しています。
息のスピードを確保するためにはアパチュアを狭めることが必要です。しかし、吹くときには口腔内に圧力がかかりアパチュアをこじ開けるようにして空気が出ていくので、常にアパチュアを広げるような力がかかっています。その力に対抗して無理やりアパチュアを狭めるために唇を力ませてしまうのです。
しかし、唇を力ませることによってこじ開ける力に対抗することは賢明ではありません。そもそものこじ開ける力を弱めてしまえばよいのです。
こじ開ける力は息の効率化によって弱めることができます。息の効率化ができていないと、たくさんの息を無理に強く吹こうとするので口腔の圧力が高くなりすぎてしまいます。息の効率化によって自然と口腔の圧力が最低限になり、口腔の圧力が下がるとともにこじ開ける力も減少します。
よって、前回紹介したアパチュアを狭めるトレーニングをすることで理想的な息づかいだけでなく理想的なアンブシュアも手に入れることできると言えます。
典型的な脱力できていないアンブシュアにスマイル・アンブシュア(Smile embouchure)があります。このアンブシュアは口角を左右に引き、笑っているように見えるアンブシュアです。スマイル・アンブシュアでは唇中央を自由に動かすことができず、また唇の形が固まることで音色が固定化され、表現力に欠ける演奏になってしまいます。鏡を見てスマイル・アンブシュアになっていないか確認しましょう。
口周りの脱力と関連して、のどの脱力についてもお話しておきます。
のども口周り同様脱力することが必要です。さらに言えば、のどは演奏で使わないと思っていただいて結構です。つまり、のどはただの空気の通り道として使い、のどによって音を調節しようとしないでください。
大きなあくびをしてみてください。すると、冷たい空気がのどの内側に触れるのが感じられると思います。このときのようなのどが開いた状態を保ちながら演奏してください。
このとき、のどを上げたり下げたりしないように注意してください。あくびをしたときのように、力が入っていない自然な状態で吹いてください。
また、タンギングをするたびにのどの声帯のあたりを一回一回閉めてしまう人がしばしばいますが、タンギングをするときものどを動かさないように注意してください。