全日本大学駅伝東海地区予選会
9月23日 三好池トリムコース
<総合結果> <男子結果> <女子結果> <寸評> <選手感想>
今年は東海地区の各大学ともに苦しんでいた。
9月に入り嘉賀が各大学の記録などで戦力分析した。四日市、愛工大、中京大がほぼ横一線。残念ながら名大は少し弱い。名商と大同工大は力が足りないだろう。東海の2枠に名大が入る確率は10%程度と読んだ。しかし望みがある限りベストの状況で試合に臨めるよう力を尽くした。
4月の段階での構想は、4周が内藤、藤田、3周が中村、森本、稲垣、伊藤。2周に小泉、藤永。その他渡辺、狭間、河合も安定感が出ていたし、藤永以外の1年生にも好素材が多く入部してきて名大にも戦えるという手応えがあった。
長い低迷に苦しんでいた藤田は、新たな刺激を求めて練習場所を中京高校での武者修行とした。しかしなかなか調子があがらず東海インカレ、七大戦は間に合わなかった。さらに夏休みにシンスプリントを再発させてしまい、藤田抜きで三好を考え直さなければならなくなった。小泉も不調から抜け出せず、いろいろ手段は尽くしたが最後の選手選考で入ることができなかった。稲垣も夏あたりから低迷が続いた。逆に好材料としては中村の急成長。練習でも嘉賀や内藤と互角に以上に張り合っていた。また1年生に力があった。藤永はもとより、七大で好走した北村がいる。木村、酒井、古川も15分40秒程度では走れるところを見せていた。
11人のメンバー選考は9月11日の三好池の試走を最後の判断材料とした。内藤、中村、稲垣、森本、伊藤、藤永、小泉はこれまでの記録や練習内容で内定。残るは4人。試走は2周で嘉賀が引っ張ってペースメーカー。14分30秒で1周。2周目の設定は14分ちょうどを指示した。選手選考とはいっても、本番が近いので消耗は最小限に押さえたい。無茶なレースにさせるのは避けたい。記録的に本番1区を意識し、最低でも28分30秒で走れるという自信もつけたかった。
一斉スタート。大集団で進んでいく。1kmあたりで、中村がまどろっこしいのか前に出て一人ペースアップした。1周目の通過13分台で中村。嘉賀が引っ張ってきた大集団の通過が14分ぴったり。設定より30秒速いが、それでも15名くらいが付いている。、選手を狙う者にはまだ余裕もみられる。たまたま三好池に練習に来ていたOBの恒川が『強いですね』と感心していた。2周目サバイバルレースが始まり、トップで中村26分43秒。伊藤が27分26秒、本田48秒、木村50秒。渡辺58秒、藤永59秒、ここまでが27分台でゴール。狭間28分06秒、酒井13秒、河合19秒、小泉23秒だった。一緒に走った嘉賀は、27分台で走った者には手応えがあるとの感想だった。不安が大きかった稲垣は研究室の都合で、森本は風邪で欠場。みておきたかったのだが、しかたない。
結局11人は内藤、中村、伊藤、稲垣、森本、藤永、渡辺、狭間、木村、小泉、本田で決定した。夏場不安定だった本田が最後の一発で11名枠に入った。
11人から8人への選手選考は、最終調整で申し込んであった豊橋の記録会を使った。当初、練習過程でメンバーを決めれると思っていたが、主力の不調と、補欠候補の好調さもあり、記録会の走りを最終材料とした。
4000mまで三好のレースペースで走り、残り1000mを2分台にアップで、いい調整になると思っていたが、選手選考に使用せざるを得ない。急遽3000mまで三好のペース、残り2000mを6分〜6分5秒ときつめの内容に変更した。1組目は伊藤、渡辺、藤永。ほぼ設定通りで伊藤、藤永はいい。少し遅れた渡辺だが悪くない。以降の組も中村、木村は大丈夫、本田も少しきつそうだったが設定以内でゴールできた。狭間も悪くはなかったが、冷静にみて渡辺の方が少し強い。期待していた小泉は終盤失速し、三好での起用をあきらめた。
豊橋に登録していなかった稲垣と森本は名大グランドで同様の内容を内藤の元で行った。しかしこちらは散々。稲垣は16分かかり、森本は16分30秒もかかってしまった。その時点で、Aは本田 伊藤 稲垣 中村、Bは渡辺、藤永、木村、内藤。に仮決定。森本の状況は、最終調整まで待つことにしたが、ほぼ渡辺で行くつもりだった。
前日の2000mの調整。狭間は自分の調整に徹するために行わなかった。全員問題なし。森本に関しては、設定を10秒速くして、嘉賀を横につけてみることにした。状態は悪くない。嘉賀の感想も私と同じで、森本1区行けるのではないかという結論だった。名大は守る姿勢でいいほど強くない。勝ち取るには攻めるしかない。1500m3分台の記録のある森本で勝負してみたい。調整終了後森本を呼び寄せ話しをした。しかし自信がなさそう。2週間近く、強めの練習ができていない。しかも先輩をはずすことになるわけだから(渡辺と同じ一宮高校でもある)僕が走りますと言い切るのも難しい(それでも私はそれを期待していたが)。渡辺も呼び寄せ話をした。『もちろん、持ちタイムが違うので、かえられても仕方ありません』という返事だった。『ただ、信用されていないというのが悔しい』と渡辺は言いながら目に涙が浮かんだ。森本も不甲斐ない現状が悔しいのか泣いた。しばらく迷ったが、『悪くても試走ぐらいでは絶対に走ります』という渡辺の言葉で決めた。森本なら良ければ27分20秒。悪ければ28分後半。渡辺なら良ければ27分40秒。悪くとも28分。しかし昨年の東海学生駅伝1区で、絶好調で臨みながらも失敗しているだけに、最悪29分までかかるかもしれない。こうしてメンバーを決定して予選会に臨んだ
当日は曇りの予報にも関わらずかなり蒸し暑かった。名大勢はいつもの場所でテントの中にいた。暑いので体育館の方へ行くようにと指示したが、気分が高揚しているのか、そこから離れるものはいなかった。なお、名大のたすきは嶋本君のご両親に作成してもらい、『try your best 嶋本直之』の刺繍が入っていた。またメンバーから漏れた井上が、熱田神宮から伊勢神宮まで歩いていって入手した伊勢神宮のお守りを縫いつけて1区のランナーに手渡した。
1区 本田(2)、渡辺(5)
14分台の力があるのが四日市の2人。中京、愛工大、名大ともに15分30秒程度。1周目はスロー展開。三好池の対岸を目を凝らしてみる。大集団で進んでいるのが見える。一周目が終わって目の前を通り過ぎる。14分の通過。渡辺、本田ともにまだ余裕のある表情で先頭集団で通っていった。いい展開だ。強い四日市の2人に負けるのは仕方ないが20秒程度に差を押さえて(2人で40秒)できれば3位、4位。中京と愛工大には30秒程度は勝ってきて欲しかった。展開はまさにそのとおりになった。四日市がペースを上げ、本田と渡辺が追走する。しかし本田は6kmあたりで止まるほどの腹痛があったそうで、大きくペースダウン。渡辺は必死に粘った。
結局四日市が1位2位で余裕の中継。渡辺は大同工大、中京学院に次いで5位で藤永へたすき渡し。本田は最後苦しみ9位。先頭四日市とは2チームで1分39秒負けた。あの展開なら1分以内に押さえて欲しかった。トータル3位は中京大で名大と15秒差、4位は愛工大で名大と26秒差。試走の時とは少し暑かったが、最大限の希望タイムからみれば渡辺は10秒、本田は30秒のロスだった。
2区 伊藤(M1)、藤永(1)
本田からたすきをもらった伊藤が、勢い込んで突っ込んでいった。昨年2区で40分台で走っているだけに、目標は40分30秒だった。しかしオーバーペース。一周目で3位まで順位を上げ追い込んだものの、2周目から四日市との差が詰まらない。前の四日市も苦しんでいただけに、もう少し冷静に走れば区間賞は取れていた。しかし全日本の夢を追って、最後まで粘りきり、たすきを稲垣に渡した。
藤永は1年生で初の三好。藤永は冷静に走った。絶好調に仕上がってはいなかったが、そこそこ走れるだろうと信頼していた。記録自体は物足りないが、緊張することなくうまくまとめた。順位は2つ下げ7位で同じ一年生木村にたすきを渡した。2区終了で、先頭四日市とは2分42秒差が付いた。2位名大で3位中京との差が17秒、4位愛工大とは1分41秒。この時点で四日市を追うのはかなり苦しい。愛工大とはアンカー勝負では負けない自信があったので相手を中京に絞った。
3区 稲垣(M1)、木村(1)
稲垣は最後まで調子があがらず不安があった。逆に木村は上り調子で、持ちタイムはないが、藤永と同様に不安よりも期待の方が大きかった。伊藤から走りやすい位置でたすきをもらった稲垣だが、前を追うほどの元気はない。後から20秒差で中京の1年生エース伊藤が追ってきている。逆転されても4区中村へ30秒程度に差を押さえておけば名大の勝利はぐっと近づく。稲垣に踏ん張って欲しかった。1周目詰められた(逆転された?)が、十分許容範囲だ。中京大伊藤も故障上がりなのだろう、インカレの時のようなスピード感がない。途中のキロポイントからの報告も10秒程度の差で大きく変わっていないので期待を持った。しかし中京大伊藤が2周回ってきたところで、すぐ後にいるはずの稲垣の姿がなかなか見えない。伊藤の走りも3分15秒程度で恐れたほどではないが、稲垣がこない。やっと見えたがすでにへろへろ。40秒近く離されている。稲垣は3分30秒のスピードだ。あと1分は離されてしまう。許容範囲を越えるかもしれない。まずい。
もう一人の名大木村は冷静に走っているが、稲垣の不調をカバーするだけの快走が欲しい。中京Bが約10秒前にいるので、『最後の一周で必ず抜いてこい』という声を2周目の木村にかけた。稲垣は1キロ毎のポイントで、やはりきっちり14秒ずつ差を広げられている。4区のスタート前の内藤、中村の所に行き、中継時点で前の中京とは2分弱の差、後の中京とはおそらく並んでくるから、中村はとにかく少しずつ追い込んで、できれば並んでゴールを目指してあきらめないこと、そして内藤は後の中京との差をできるだけつけることを確認(期待を込めた命令)しあった。中京が行って1分24秒後にやっと稲垣が現れた。最後の1kmは差が開かなかった。木村は一旦中京Bに並びかけたものの、もう一度突き放され、12秒差を付けられてしまっていた。
4区 内藤、中村
中村がスタート。400m前にかすかに姿が見える。しっかり見て詰めるんだぞと声をかけた。勢いよく突っ込んでいった。キロポイント毎の報告で驚いた。10秒ずつ詰めている。明らかにオーバーペースだ。1周回った時点で差は30秒少々。もう射程距離に入れた。大丈夫かと声をかけたが反応はない。闘志は表情にあふれているが、きつそうだ。ハラハラしながら応援するしかない。通過ラップが13分15秒。3分05秒弱の入りだ。中京工藤は3分15秒だろう。追いついてしまえば何とかなるかもしれないがかなり危険だ。 内藤は中村から離されたが愛工大牛山、中京大坂井と冷静にラップを刻んでいる。2周目が終わった時点で中村は中京に追いついた。両者ともにかなり苦しいが、中京工藤の走りが明らかにおかしい。どうも片足痛めたようで全くの不調だ。これは行けるかもしれない。3周目で内藤が中村に追いついた。中京坂井と愛工牛山、名大の内藤、中村が並んだ。中京大工藤は30秒程度離れてかなり苦しい。あと持ちこたえれば2位を確保できる。夢が広がった。愛工大牛山は、とにかく抜けださなけば全日本はない。一人で出ていき、内藤、坂井、内藤が一団となって我慢比べとなった。池の対岸をみていると、1kmで紫のユニフォーム(愛工大牛山)が過ぎてから10?20秒で3人の白い姿が見える。中村が2?3メートル遅れているがまだ大丈夫。そこから30秒以上遅れて中京工藤が行く。内藤は大丈夫だろうが、中村このまま粘ってくれと祈った。2kmでもその状況は変わらない。その時点でゴールにいた名大勢に、逆走して内藤、中村の最後の激励に行けといって、ゴールで待った。3kmでも愛工大との差が広がっているが、白いユニフォーム3人はほぼ固まっている。もう大丈夫かもしれない。
そして余裕綽々で四日市勢が相次いでゴール。4km手前のコーナーで3つの白いユニフォームが確認できた。あと残りは400m。まず愛工大の牛山の姿が見えた。30秒遅れて中京の坂井。秒差で内藤の苦しそうな表情が見え、その10秒後ろに中村が現れた。力を尽くしてゴールイン。中村は倒れた。後続の中京大と愛工大を確認するがまだ現れない。1分遅れで中京大、そして愛工大の松田が迫っていた。
結果2位、3位には28秒差で愛工大が入り、名大と4位中京との差は49秒という接戦だった。こうして全日本の切符を手に入れた。
女子 小山(2) 天野(1) 三谷(3)
残念ながら女子はチームが組めなかった。東海地区の増枠を働きかけるためにも組みたかった。白藤、400mの久野、柳原を入れてメンバー編成を考えたが、2日後にジュニアの試合に柳原が出るというので(本人は駅伝にも出るつもりだったが)断念した。結局1チーム編成のオープンの参加となった。1区は小山。昨年は元気が良かったが今シーズンは低迷が続いている。練習熱心で意欲も高いのだが、闘志が空回りしている状況だ。あと少し細くなれば大きく飛躍できるのだろうが、焦らないで頑張って欲しい。1区では昨年よりも10秒以上速いタイムだったが、中京の永田、澤口に負けてしまった。
2区天野は元気な1年生だ。現状の力通り走り切った。区間3位。椙山の前田に18秒負けたのは悔しいだろうが、まだまだ1年生だ。一冬故障なく越せば大きく飛躍する可能性が大きい。
3区三谷。昨シーズン苦しんだが、その分今年は春から調子がいい。走るたびにベストを更新していた。しかし学部がかなり忙しくなり、陸上との完全な両立ができない。三好の直前も遠地へ10日間島流しの状況になり、練習もままならない。とりあえず4分ペースで2周走るだけでいいという状況で走った。このタイムは不本意だろうが今の状況では仕方ない。
女子 椙山大
A 垣津(1) 前田(1) 山元(1)
B大堀(1) 牛丸(1) 後藤(3)
椙山大勢も、名大グランドで一緒に練習している。いろいろな意味で練習に活気がつき、刺激しあって、名大勢にも好影響をもたらしている。本当によく練習している。
椙山大には、今年1年生に好素材が入部し、一気に期待が膨らんだ。あと1名いればチームが組めるということで強引に稲垣の後輩の牛丸を9月に入部させ6人のチームができた。1区は垣津。昨年度の800m岐阜県チャンピオン。大学に入ってからは、駅伝を視野に入れた練習をしている。西日本インカレは1500m 4分37秒で4位入賞。豊橋での3000mでは9分52秒で走っている。中京大は永田と澤口。負けたら帰ってくるなと言えるほど状態も良かった。堂々の1位でたすき渡し。昨年は岸上が1位だったがその記録を13秒上回った。けっして華麗という走りではないが、スピードがありまだまだ強くなる。
2区は前田。期待の新人で根性がある。陸上は大学に入って始めたばかりだ。これまでバレー、ソフトとやってきてやっと本職を見つけた。合宿で痛めた脚も完治して絶好調で臨むことができた。区間2位で走りきりトップで3区のエース山元にたすきを渡した。
3区は山元。西日本インカレ1500m3位入賞(4分36秒)。直前の800m予選を走らなければおそらく優勝しただろう。前田からトップでもらってスタートしていった。後から追ってくる中京大のエース木富との対決となった。負けることはないとたかをくくっていたが、木富は絶好調だった。1周目で逆転され、残念ながらそのまま2位となってしまった。安易に男子のDグループに入れてうまく調整させられなかった私に責任がある。木富にあっさり抜かれた悔しさを忘れず、とりあえず今シーズンは5000m16分30秒を切っておきたい。
椙山のもう一チームは後藤を中心として組んだ。1区2区の大堀、牛丸ともにまだ練習しはじめたばかりで、400m1周120秒のペースランもできない状況だった。歩かないで三好池1周を回ってくるだけでよかった。しかし1500mの持ちタイムは、牛丸4分台、大堀は5分15秒がある。練習を継続して積むことができれば今後大きな戦力となる。
そして3区は中心人物後藤が務めた。彼女が声をかけてこのチームができあがった。後藤自身は調子の波が大きくて、今回はこんなものだろうという記録に終わった。しかし期待がもてるチームだ。この6人が1年間全日本を狙うことができたなら、かなり可能性は高い。後藤がいるうちに大阪の大会をみることができるか?