あたしの道はあたしが決める
作者:守里 桐(@kiri_ragadoon)
原作:人知らず(@Hitosirazu456)
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二か月に及ぶリハビリの末、あたしの身体はボスからOKが出るぐらい動くようになった。前のような激しい運動はもちろん、飛んだり跳ねたり走ったりはできないけど、ひとりで日常生活は送れる。
外出許可が下りて一番初めにお願いしたのは、家族で出掛けること。姪っ子さんに会うんじゃないのか、とも言われたけど、初めてはやっぱり家族とが良かった。家族で、と言っても、流石に全員は無理だから、まず二枠は確定。最後の枠はは公平にくじ引きで決めた。大の大人が本気でくじ引きをしている姿は可笑しくて、思わず声を上げて笑っちゃった。ボスは高みの見物でゲラゲラ笑ってたし、参謀はあまりの熱量に若干引いてた。
そんなこんなでひと悶着ありつつも、あたしたちは洋館のある街の観光地を巡っていた。海の近いこの街は、夏でも爽やかな潮風が吹いているから過ごしやすい。小さいけど丁寧な仕事で評判のブティック、フルーツやクリームたっぷりで美味しいクレープ、この街で一番大きな劇場。本当は隣町にある水族館とかに行ってみたかったけど、最初でそんな遠くまで行くのはダメって言われちゃったから、お楽しみは今度に取っておく。石造りの道を低いヒールで軽快に鳴らしながら歩いていると、甘く香ばしい匂いが流れてきた。その香りに誘われるように進んでいった先にあったのは、テラスが併設されたオシャレなカフェ。でも、数組の列ができているから、待つことになりそう。
「どうした。あのカフェが気になんのか?」
「ええ。すごくいい匂い。きっとおいしいものがあるに違いないわ。でも……」
「なら行くか。少し待つことになりそうだが、お前も歩き疲れてるだろうし、丁度いいだろ」
「まだ食べる気なのか……」
呆れたような視線が投げられたけど、「美味しいものを前に我慢できるわけないじゃない!」と息巻けば、仕方ないなと一緒に並んでくれた。でも、幸運にもテラス席が空いたみたいで数分と待たずに案内される。日差しは強いけど、パラソルのおかげで直射日光はこないから結構快適。お冷とともに出されたメニューとにらめっこして、注文を決めていく。ふと視線を感じた気がして視線を上げた。パチリと目が合う。一瞬の交差。あたしの目は人混みの向こうに確かに捉えた。変装していたけど、あの姿は間違いない。
「ふふっ」
「? 何か気になることでも?」
「いいえ。何でもないわ!」
あたしの返事に訝し気な視線を向けられる。その視線に「ほんとに大丈夫だから」と返し、またメニューに視線を戻した。
ありがとう。それをあの人に伝えることはきっとできない。でも、あなたのおかげで、あたしは自由になれた。だから、あたしはあなたがくれた自由を死ぬまで満喫するの。だって、あたしの人生(みち)を決められるのはあたしだけなのだから!