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大井川鉄道の車両について

工・原子核・3 藤木 一雄

大井川鉄道では本線、井川線ともに個性ある車両が多数走っており、とても興味深い。ここでは、それらの車両を本線、井川線に分けて紹介していきたい。また、同鉄道の観光の目玉となっている、蒸気機関車とその客車については、別項を設けてあるのでここでは触れないこととする。

1.大井川本線の車両

大井川鉄道本線は路線規模の割に所有する車両数が多く、形式も多種多様に渡っている。これは名鉄や西武などの大手私鉄から余剰になった車両を購入して使用しているためでである。それでも最近は比較的新しい車両を導入して新性能化、冷房化を進め、乗客へのサービスを向上させているのは評価できる。そのため貴重な旧型車両の出番がなくなっているのは残念ではあるが。

<電車>

311系
311F モハ311・クハ511
311系
'98.3.4  千頭

元西武鉄道371形のクモハ374・371。つりかけ駆動で、クリームと赤の大井川鉄道在来色に塗装されている。西武371系は書類上は西武所沢工場製造となっているが、もとをたどれば大正時代の木造省電を鋼体化したモハ50系からきている国鉄クモハ11型400番台で、山手線で使用されていたこともある。昭和34年に西武鉄道に入線し、大井川鉄道には昭和51年に編入した。このときクハ511は電装解除されて制御車となっている。また昭和63年には3扉ロングシートであったのを中間扉を埋めて2扉クロスシートに改造され、全照灯をシールドビーム2灯に交換、モハ311とした。現役の中では最古参の車両であり、貴重な17m級旧型国電の生き残りであるが、現在ではすでに普段の運用から外れて千頭駅構内に留置されており、近鉄16000系の入線もあって今後の動向が注目されている。


312系
312F モハ312・クハ512
313F モハ313・クハ513
312系
'98.4.7 代官町

元西武鉄道のクモハ366・364・361・362。つりかけ駆動で、今では貴重な「湘南型」スタイルの車体をそなえており、大井川鉄道在来色に塗装されている。この形式のルーツは西武所沢工場で旧型国電の機器を流用して昭和29年より製造された初代501系である。昭和52年・55年に大井川鉄道に編入され、その時に3扉を2扉化し、西武5000系特急車のシートを利用してクロスシート化、さらにクハ512・513の電装解除が西武所沢工場で行われた。かつて312Fは間にサハ1426を挟んで3連で運用されていたが、現在ではサハは外されてお座敷客車ナロ802に改造されている。


402系
421F モ421・ク571
402系
'98.4.7 新金谷車庫

元近畿日本鉄道名古屋線の特急車6421形。つりかけ駆動車。昭和21年に日本車輌で近鉄名古屋線の特急車両として新造され、昭和34年伊勢湾台風の復旧で名古屋線が標準軌に改軌されるまで同線で活躍した。その後広軌化改造されたが再び狭軌に改軌され養老線で使用された。養老線時代は旧近鉄普通車の小豆色に塗装されていたが平成7年12月の大井川鉄道編入時にクリームと青の近鉄特急時代の塗装に戻されている。また、近鉄時代に片運転台化とともに新造時には2扉であったのを3扉に改造されており、そのとき増設された中間扉だけが両開きでこれが当車の外観上の特徴となっている。


1000形
1001F モハ1001・クハ2001
1000形
'98.4.3 代官町

元伊豆箱根鉄道駿豆線のモハ1001・1002。つりかけ駆動車。昭和38年西武所沢車両工場で製造された。伊豆箱根鉄道時代は中間車を含む3両編成であったが、平成3年にそのうち先頭車2両だけを譲受した。その際ブレーキを電磁直通ブレーキから自動ブレーキに変更し、在来車と併結運転を可能にしたり、モハ1002を電装解除してクハ2001とするなどの改造がなされている。また、クハ2001には飲料の自動販売機が設置されている。


3000系
3008F モ3008・ク3507
3000系
'98.4.7 家山

元京阪本線の特急用車両。車番・塗装は京阪時代のまま。ク3057の側面には「テレビカー」の文字も残っている(但し、車内のテレビは撤去されている)。大井川鉄道ではまだ貴重なカルダン駆動・冷房車。昭和44年に川崎重工で新造され、平成7年5月に大井川鉄道に編入する際には標準軌車のため営団地下鉄5000系の台車を転用して改軌し、また一部ロングシート化、ワンマン化、制御方式変更等の改造が施されている。また、ク3057には飲料の自動販売機が設置されている。


3800系
3829F モ3829・ク2829
3800系
'98.4.7 新金谷側線

元名古屋鉄道3800形で、車番もそのまま。つりかけ駆動で大井川鉄道在来色に塗装されている。昭和23年に名古屋鉄道が豊橋−新岐阜間を昇圧する際に特急用車両として新造された。昭和47年に大井川鉄道に編入し、座席は当初ロングシートだったが昭和63年に名鉄7200系のものを流用した転換クロスシートに改められた。戦後すぐに日本車輌本店で量産された「運輸省規格A’形」と呼ばれるタイプで名鉄や富山地鉄でよく見られ、大井川鉄道でも最盛期には3編成6両あったが、21003Fの編入で3822Fが廃車となった今では現存はこの一編成(と、後述のクハ861)のみである。この編成も現在は普段の運用に入っておらず新金谷の引込線に留置されており、近鉄16000系の入線でその運命は311形とともに風前の灯火であるといえる。


6010系
6011F モハ6011・クハ6061
6010系
'98.4.7 代官町

元北陸鉄道加南線6000系。塗装、車番と愛称の「しらさぎ」もそのまま引き継いでいる。昭和38年に日本車輌本店工場で在来車の下回りを流用し、車体を新製して作られたつりかけ駆動車。日本初のアルミ車体車として有名で、昭和46年10月の大井川鉄道編入より今まで活躍し、大鉄の顔となっている。もちろん今は600Vから1500Vへの昇圧改造がなされているが、入線当初は別の電車に牽引されて使用されていた。近年、前照灯の両側にシールドビームが追加された。


21000系
21001F モ21001・モ21002
21003F モ21003・モ21004
21000系
'98.4.7 家山

元南海電気鉄道高野線の21000系ズームカーで、塗装・車番はそのままである。大井川鉄道初のカルダン駆動、冷房車で、元京阪の3000系とともに本線の新性能化、冷房化に貢献している。昭和33年に南海高野線の特急、急行用に帝国車両で製造された。21001Fは平成6年に、21003Fは平成9年に大井川鉄道に編入された。それぞれ編入時にワンマン化等の改造が施され、またモ21002・モ21004には車内に飲料の自動販売機が設置されている。


86形
クハ861
86形
'98.3.4 千頭

元名古屋鉄道3800系ク2805を昭和45年に譲り受け、クハ510としていたものを、昭和61年に大鉄技術サービス(大井川鉄道の子会社で、車両の保守等を委託している)でトロッコ列車風の窓の無いオープンカーに改造したものである。3800系については前記の項目を参照して頂きたい。現在は休車状態で千頭に留置されている。車内には木製の座席とテーブルが設置されているが、木製ゆえに風雨にさらされ痛みが激しく、車籍が残っているとはいえ今後の復活は難しいだろう。


<電気機関車>

E10形
E101〜103
E10形
'98.4.7 新金谷

昭和24年12月の大井川本線電化と同時に登場した電気機関車で、現在の本線用の車両としては唯一大井川鉄道が新製した車両であり、前面の乗務員扉と側面中央には大きな社紋板が取付けられている。登場当初は大井川鉄道には電車がなかったこともあり、貨物輸送のほかに混合列車をそれまでの蒸気機関車に代わって牽引していた。やがて電車が増備されると混合列車はなくなり、貨物輸送に専念していたが、鉄道貨物輸送の衰退とともに本線の貨物輸送もなくなり、現在では主にSL急行の補機や回送、臨時列車、工事列車等に使用されている。自重45t、出力は150kW×4。製造はE101とE102が三菱電機、E103が日立製作所であり、車体形態とギア比等の性能が一部異なっている。また、E103は昭和45年に一旦岳南鉄道に譲渡されたが、昭和61年に大井川鉄道に再び譲渡されて戻ってきたという経歴を持っている。


<車籍無し>

元近鉄16000系
モ16001・ク16101
モ16002・ク16102
16000系
'98.4.3 新金谷車庫(許可を得て撮影)

近鉄の南大阪線の特急車両で、昭和40年4月に制作された新性能、冷房付きの車両。Mc−Tcの2両固定編成で、2枚折り戸の片側2扉、座席は回転式シートである。昨年には新金谷の車庫に入っていたが、予算と補助金の関係で大井川鉄道の所有になるのは今年度に入ってからだそうである。本線に合わせた改造などが済み次第、定期運用に組み入れられるものと思われる。


チキ300形
チキ303
チキ300形
'98.4.7 新金谷側線

国鉄から昭和38年に払い下げられた25t積み長物車。元は大正10年汽車会社製の国鉄チキ300形チキ341であり、同形車4両が大井川鉄道に入線した。木材輸送用として期待されたが、木材の鉄道輸送の衰退によりたいした活躍もしないままに301・302が昭和47年に名鉄に譲渡され、304は昭和49年に廃車され解体、この303も昭和55年12月に廃車となり車籍を抹消されたが保留された。しかし、車籍はないが、車体表記を見ると全般検査を受けているようであり、工事等に使われているのではないかと思われる。新金谷の引込線に前述の3829Fと一緒に留置されていた。



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