マ行

「マッカンドルー航宙記」
「ミラーメイズ」
インデックス
「ミラーメイズ」
J・P・ホーガン 東京創元社

 WARNING!私はこの作品を最後まで読んでいません。従ってこれはまともなレビューではありませんので、そのつもりでお読みください。
 冒頭、いきなりリンクスと呼ばれる女の殺し屋が出てきてドライマティーニを飲むシーンから始まる。ホーガンはついにハードボイルド作家となってしまったのだろうか?
 すとーりーはAD2000年、発達した官僚機構のために社会が硬直化したアメリカで、二大政党を押しのけて御憲党という新しい政党から大統領が選出されたところから始まる。御憲党の制作は完全自由主義経済を実現して社会を変革しようとするものであり、旧体制に置ける権力者は新しい大統領を失脚させようと策謀を開始した。一介の弁護士であったメルヴィン・シアーズは昔の恋人の妹であるステファニー・カーニの殺人事件からこの諜報戦に巻き込まれていく。ここまで来れば明敏な読者には明らかであろう。これはSFではない。しいて言えば、ポリティカルフィクションというジャンルになるのだろうが、御憲党の設定その他にホーガン能天気さが余すところなく盛り込まれている。
 完全自由主義経済が社会をよりよい方向に持っていけるのかどうか知らないが、それを旗印とする御憲党が国民の自主性と良識によって圧倒的な指示を受けているところに、日本人である私にはうそ臭さを感じるのである。(結構悲しいことではある)。
 ポリティカルフィクションは基本的にオプティミズムが無いと救いがないが、余りありすぎてそれが鼻に付いてしまう。
 題名の『ミラーメイズ』というのは、右翼も左翼もみんな同じ穴のむじなで大衆をだまして権力を得ている集団であり、対立しているように見えても鏡に写った二つの虚像でしかないということから来ている。
 作品中、ハイブリッド型原子力発電を推進する企業が政府の官僚主義に泣かされているところや、登場人物により科学の発達がすべての問題を解決するという楽観論が語られるが、そこらへんがハードSFのきょうじなのだろう。科学に対する盲目的ともいえる楽観主義でなければSFなんぞは書いていられないのだろうから。
 正直に言ってしまえば、ソ連で行方不明になった核ミサイルが絡んでくるところは投げ出してしまった。
 ストーリーは所々というより執拗にメルヴィンの学生時代に戻り、恋人であったエヴァ(ステファニーの姉)とのいきさつを追いかけていく。どう見ても本筋とは関係ないエピソードであるこれがどう関わっていくのかはわからない。特に意味がないのだとしたらこれは本当に駄作ということになるだろう。
(PSYCHE)

このページのトップ
「マッカンドルー航宙記」
チャールズ・シェフィールド 酒井昭伸 訳 創元推理文庫
 
 天才物理学者マッカンドルー博士の冒険活劇、と言いたいところなのだが、ちょっと待った!弱いぞ、マッカンドルー。
 第一話では凶悪犯に撃たれ重傷。第二話ではいきなり行方不明。第三話では捕られられそうになる。第四話では女に丸め込まれて死にそうになる。第五話では砂地獄にはまる。
 こんな窮地にたったマッカンドルーを助けるのが、宇宙船の船長ジーニーで、彼女の方が主役みたいだ。一応ジーニーの視点からこの「航宙記」は書かれているが、かのSHシリーズも視点はワトソンである(と思ったが)。どちらが主役でもかまわないが、卑しくも己の冠を題名につけているのだから、もう少し自重して欲しいものだ。
 とはいえ、マッカンドルーを責めてもしょうがない。天才的頭脳をもつがゆえに好奇心旺盛で誘惑に負けてしまったり、不幸な自体に泣かされているだけなのだから。”究極の教授”という看板はやはり重たい。負けるな、マッカンドルー。憎めないその性格をうまく利用するんだ。

 一方ジーニーが強いのは、経験豊富なこととカンが良いことなんでしょう。
 マッカンドルーとジーニー、なかなか良いコンビなんじゃないかな。

 本書はハードSFと位置づけられているが、ハード性を飛ばして読んでも(作者の本意ではないだろうが)、じゅうぶん宇宙冒険記として楽しめる。ハードSFを毛嫌いしている人にも読んでもらいたいものだ。
(K・小松)

このページのトップ