TOP巻頭言集 第45号 悟弓巻頭言

第45号 悟弓巻頭言

弓射の三病      師範 魚 住 一 郎

尾州竹林流四巻の書『中央の書』第九に、弓射の三病と五緩ということが記されていかす。弓射の三病とは、早気、遅気(もたれ)、緩み離れのことで弓道の三大病癖とされ、知らず知らずのうちに取り付かれて治すことが非常に難しい難病とされています。

 これを治すには「柳は緑、花は紅、仏祖不伝不立文字に片付る事なり」としています。これは「柳は緑色、花は紅であるように、人の骨相や筋肉に応じ、初心より正道に付くよう再出発する以外に方法がないという意味で、この心は仏や師匠も教えることができず、文字にも書き表すことが出来ない言語道断の儀なりと言う意味である」と注釈されています。

 最近、早気で困っている現役諸君がみうけられますが、なかなか治すことが出来ないようです。修練の過程で中りがでてくると、早気になったり、引分ける時に息を詰め、力んで引く場合に多くみうけられます。

 早気は調子がよい時はよくあたりますが、いったん調子が崩れると的中を得ることが出来ず極めて不安定な弓射となってしまいます。

遅気は引き収めてもなかなか離れない状態になる病癖ですが、会で気力が停滞したり、バランスを取って手先で放そうとするために離れの機を逸したり、離れの機が生じないことが多いようです。

緩みには五緩といって、引き収めてから弓手の手の内がじりじりと緩む弓手の緩み・懸拳に力が入り過ぎて力に行き場がなくて緩めて放す馬手の緩み・引き収めた時に右肩や左肩が前後左右に偏っている場合の左肩、右肩の緩み・収めてから胸が縮む、この五つの緩みのことですが、いずれも気の迷いや心気の働き、骨法にあわない引き方、力のバランスが悪いことなどが原因であることが多いと考えられます。

三位一体とか心身弓の合一などといわれますが、心と体と弓がうまく調和するよう工夫をすることが最も肝心です

 病気にかかると医師にみてもらい薬を処方してもらったり、手術などの治療を受けるわけですが、最終的に病気を治すのは医師でも薬でもなく自分自身であることに思いを致し、初心に帰ってやり直す勇気と信念が必要でしょう。


 


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