第44号 悟弓巻頭言

TOP巻頭言集第44号 悟弓巻頭言



 中り      師範 魚 住 一 郎



 今年1122日、23日に伊勢神宮弓道場で開催された第53回全日本学生王座決定戦を観戦することができました。法政大学は、一回戦シード、二回戦・三回戦は96射それぞれ86中・87中、決勝戦は160150中という驚異的な成績で優勝しました。

 一方、名古屋大学の成績を顧みますと、男子が東海学生選手権で12年ぶり7回目の優勝をしましたが、女子は一回戦で敗退、リーグ戦では男子は入れ替え戦は免れましたが4位、女子は3位と低迷、七帝戦では女子が優勝しましたが男子は残念ながら6位となり成績が極めて不安定な年でした。

 尾州竹林流四巻の書『初勘の巻』に、「始中終法度の事」として、「中り、矢走、射通、遠矢、花形(射形)」の五項目をあげ、その第一に「中り、意趣は七道に之有るなり」とし、「却って初心の部に帰す、能々口伝あるべし」と教示しております。

 即ち、稽古で心掛け守らなければならない五項目のうち、「的中を第一義とす。それには七道の射形骨法を修すべし」と注解されています。

 的中の重要性については「・・・弓乃情と言ふは中りなり。中らざるは鉄壁を十重通しても用に立たず、遠く射やりても物に入らざるなり。弓の本地と言ふは中りて矢早きを本とす。・・・」と記されております。

 的中がまず大切であり、それには足踏みから離れまでの正しい運行、骨法によらなければならない。基本が崩れていては、安定した的中は得られないという事です。

 また、稽古をしている間には、知らず知らず骨相筋道が崩れて的中も不安定になり心の迷い、心の病が生ずるものであるから、こうした場合には、習い始めの心に帰り、第一歩より出直して稽古することが肝要であるという教えです。

 言葉では理解できても、実行する事はなかなか難しいことですが、法政大学を範とし、初心に帰って修練したいものです。

 「為せば成る、為さねば成らぬ何事も

成らぬは人の為さぬなりけり」  上杉鷹山


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