第42号 悟弓巻頭言

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高山に推車      師範 魚 住 一 郎
                         

今年は、3月の第36回東海学生60射会で鈴木里美選手が優勝したのを皮切りに、6月の第46回東海学生選手権で女子団体優勝、7月の第42回国立七大学戦で念願の女子全勝優勝、第47回東海学生秋季リーグ戦では女子U部全勝優勝、同入替戦でT部昇格など特に女子の素晴らしい活躍が目だった年でした。

これは、選手諸君の努力はもとより、役員をはじめ部員の皆さんや先輩諸氏が一丸となって努力された結果であり、誠にお目出度くご同慶に堪えません。関係各位の積年のご努力に深甚なる敬意を表したいと思います。

弓道修練の道程は、幾重にも重なる峠を越え頂上を目指す登山によくたとえられますが、これらの成果は、一つの大きな峠を越えたもので、誠に意義深いものと思います。

今一度、来し方を顧み、現状にあまんずることなく、靴の紐を締め直して、さらに次の峠・頂上を目指していただきたいと思います。

弓道は的中がすべてではありません。礼に適った体配、洗練された射技の結果としての的中でなければなりません。正射必中を目指し不断の修練をする中で、人間性が高められなければならないと思います。

 

尾州竹林流四巻の書「歌知射の巻」に『弓稽古の人起請の瑞作の事として、一、高山に推車、二、玉竹の遊、三、神璽という行があり、『道は達者より出ずる。稽古は信より起こる。稽古より鍛練は出ずる。鍛練より奇特は起こる。奇特より神変出づ。神変より不思議は起こる。不思議より妙は起こる。此妙に色々口伝あり能々口伝してかりそめにあるべからず。随って名人の始めに千里の行も一足より始まるといふ説能々聞くべし。釈迦大師も名匠も名人も生る時は別の所なし。高きも賤しきも甲乙共に皆一つなり。並べて二つなし。生まれ難き世に出て人界を請けて習学の道に事行なはざるは口惜し。』ということが書いてあります。

よく心に留めて、不断の修練をされんことを願うものであります。

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