第25号 悟弓巻頭言

TOP巻頭言集第25号 悟弓巻頭言



 優勝を目指して      師範 魚 住 文 衞



 昨年は部員諸君の努力がみのって、ここ数年来の念願であった東海学生弓道連盟第一部への復帰ができたことは喜びに堪えないとともに部員諸君の努力に対し敬意を表する次第であります。

 本年は目前にせまっている第三十回東海学生弓道選手権大会や秋のリーグ戦の優勝を目標にして頑張ってもらいたいと祈念致します。

 先日東京で、日大弓道部OBであり監督兼師範の八反田角五郎先生(範士九段八十三才)にお目にかかる機会があって、日本弓道界の現況や射法射術などについて雑談しました。

 八反田先生は、嘗て日大弓道部員を指導すると共に全日本学生弓道連盟の副会長として学生弓道の振興に貢献せられた有名な先生でありますが、或る時、八反田先生は一学生に「学生弓道の目的は何か」と尋ねられたところ、「我が大学の的中率を上げて各種の大会で優勝することである」と答えた。ということを私に話して下さいました。

 学生弓道といえども、一般の弓道と同じく最終目標とするのは人格を陶冶し、人間性を豊かにすることでありますが、学生弓道のとりあえずの目標は試合に勝つことであることを否定することはできないであろうと思います。何故ならば、試合に勝つには的中率を高めなければなりませんが、的中率を高めるには心技体を和合する修練が必要であります。一本の矢を射るのに多数の「和」の結合が必要であります。ちょっと考えただけでも、

一、縦軸と横軸の調和

二、左腕と右腕の力の均衡調和

三、弓の強さと弓を押し引く筋力の調和

三、呼吸(息合い)と動作(運行)の調和

四、一射に精神を集中すること(心と射技の和)

五、弓道の調和(弓、矢、弦、弽)

六、上記諸条件の調和(心技体の一致和合)

など、多くの条件が調和しなければ正確な条件は得られません。これらの和合はむつかしいことでありますが修練を持続することによって可能となります。十分修練を積んだ人が弓構えをしてから以降(打起こしから離れまで)目を閉じていても的中する実例を私は知っております。

 このように「和」の精神を弓道によって体験し涵養することは人格陶冶に直結するのであります。自分の一射に「和」の万全を期し、弓道部員全体が一致和合することによって偉大な成果をもたらすことができると思います。

 射法射技について、あれこれと研究することは弓道上達上必要でありますが、的中を向上するには、先ず基本射形を整え、基本射形が整ったならば、迷うことなく自信をもって千射万射同じように練習を繰りかえすことが肝要であります。

 私の見るところでは、名大弓道部員のうち若干人の部員を除く外の部員は概ね基本射形が整っておりますので、自信をもって「気力と息合いと引き分けの運行が一致和合するように」練習を続け、よい成果を挙げられますように期待致します。


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