みなさんが曲を練習し始める前に、一つお話しておきたいことがあります。それは「表面的な技術的難しさと本当の難しさは別」ということです。
初心者が始めて吹くケーナの楽曲として最初に思い浮かんだのはUña RamosのPotosino Soyでした(補足しておくと、これはカバーであり作曲はHumberto Iporre Salinasです)。この曲は最高音が2オクターブのドであり、そこまで早すぎない2拍子で、初心者がじっくりと考えながら練習するのにちょうどよい難易度であると考えたからです。。
しかし、だからといってこの曲が上級者にとって取るに足らないものであるかと言えば、それは違います。一度Potosino Soyを演奏し、その録音を聞いてみてください。そして、あなたは本当にPotosino Soyを演奏できているのかしっかりと確認してみてください。 Uña Ramosの日本刀のようなキレのあるタンギング、素朴で心を動かす音色、儚く露のように消えるリリース、ケーナに宿る魂の躍動は再現できていますか?
曲を吹くということはただ音階上の音をなぞることではありません。原曲からその演奏の奥の奥にある部分をつかみ取り、それを自分なりに解釈して演奏に落とし込まなければなりません。たとえ一見技術的に容易な曲に見えたとしても、決して取るに足らない曲ということはないのです。
しかし、悲しいことに幾許かケーナが上達してくると早い運指などの技巧的な演奏ばかり求める人が散見されます。それは「難しい曲ほど良い曲である」という誤った観念に基づいています。これは「偏差値が高い大学ほどよい大学であり、優れた学生が所属している」と主張する学歴至上主義者のような浅はかな考えです。
そのような人は一度、ケーナで「きらきら星」を演奏してみてください。装飾音などは当然なしで、ただ素朴にあのシンプルなメロディを奏でてみてください。本当にケーナが上手な人であれば、これだけで人の心を動かすことができるのです。
本来演奏は演奏者が楽しみ、聴衆も楽しむためにあります。どう楽しむかは人それぞれですが、少なくとも人前で披露する機会があるようであれば、演奏者だけが楽しむようなことはあってはいけません。常に聴衆を楽しませることを意識し、また自身も楽しむようにしましょう。
本編で登場した楽曲を全て登場した順に以下に載せました。つまるところただの私のお気に入りプレイリストですが、参考にはなるかと思います。重複があるかもしれませんが気にしないでください。