★精神鑑定
A/T『精神鑑定とは何か』福島章 著
1997年8月5日 2003年9月18日加筆
講談社 ブルーバックス
T、鑑定とは
*鑑定=法律関係者が事件に関して法律以外の専門家の援助を求める作業
*精神鑑定=鑑定のなかで、精神医学や心理学にかかわるもの
*鑑定人=精神科医、心理学者、家裁の調査官など
*起訴前鑑定
−簡易検定と本鑑定とがある。
−精神鑑定の結果、責任を問えないと検察官が判断すれば、起訴されない。
*司法精神鑑定=起訴後に裁判所の命令で行われる精神鑑定
U、心神喪失と心神衰弱
*心神喪失=精神障害のために、自分の行為の善悪が判断できないか、自分の行動をコントロールできない状態のこと
*心神衰弱=判断やコントロールができないわけではないが、著しく低下している状態のこと
V、刑法第39条
1、心神喪失者の行為は、これを罰せず。→無罪
2、心神衰弱者の行為は、その刑を軽減す。
→裁判官が最終的に判断する。
−責任能力のないものを罰しないのは、刑法の基本
例)赤ん坊が放り投げた刃物で誰かが傷ついても、赤ん坊は罰せられない。
これは風邪薬だから患者に飲ませてねと医師にウソをつかれ、毒薬を飲ませて人を殺してしまっても、全く知らずに毒を飲ませた人は、罰せられない。
−神経症(ノイローゼ)や人格障害→責任能力あり
統合失調症であり、犯行当時責任能力がなかったということになると、罰しない。
W、精神鑑定の流れ
裁判所か検察からの依頼→裁判記録を読む→面接→家族面接→心理テスト→脳の医学的検査→精神鑑定書の作成
X、心理テストで本当の自分を隠して鑑定人をだますことができるか
→いくつもの複雑なテストを行い、経験豊富な鑑定人が判断していく中で、そのすべてをごまかすことはとても難しい。
Y、脳の影響
犯罪の基底には、脳の機能的異常(脳波異常)や形態学的異常(CTやMRIの異常)がある。
精神鑑定
日本の論点2003 論点71−司法精神医療のあり方は
山上皓(やまがみあきら)東京医科歯科大学教授
「精神障害者の再犯防止のために一刻も早く欧米並みの法規制を」
*刑法第39条
1、 心神喪失者の行為は罰しない
2、心身耗弱者の行為はその刑を軽減する
*この規定により不起訴処分や裁判で刑を減免されて釈放される人数=800人/年
・欧米諸国→刑罰に代えて治療を義務付ける制度を備え、治療による効果的な再販防止を目指す。⇔But一般医療の何倍ものコストを要する。
*問題点
@医療では対応困難という理由で入院を拒否され、そのまま釈放される
A医師一人の判断で一月以内に退院を許される
B入院先の病院で他患者を殺害したり重い障害を負わせるような事件が、毎年何十件もおきている
C危険で手に余るという理由で、強制的に退院させられることもある
D事件を起こしては詐病を用いて精神病院に逃げ込み、じきに退院していく重大犯もい
る
E職員や他患者にとって危険という理由で、死ぬまで保護室に閉じ込められる重大犯もいる
日本の論点2002 論点82−触法精神障害者の処遇は
小田晋(おだすすむ)国際医療福祉大学教授
「もはや骨抜きは許されぬ―「触法精神障害者」の立法における確たる根拠」
事例に刑事裁判所による治療を命令し、そのための司法精神病院を設立する
触法精神病患者対策
精神神経学会理事会
精神障害者が一般に危険であるという偏見を助長することになる
ある日病室で目が醒めれば隣の病床に凶悪犯が寝ている、というのは恐怖以外のなにものでもない
筆者がかつて鑑定した有機溶剤中毒の殺人犯は不起訴、措置入院となって、病院で他の患者を撲殺してしまった
検察官に治療処分の請求権を与える
公共の安全と障害者の人権