2004年後期統一タイトル「刑事問題」
死刑制度リサーチ
『Q&A死刑制度の基礎知識』
*国際的視野から見た死刑廃止の状況
−2004年4月現在、死刑廃止国6割(117カ国)
−経済先進国でアメリカと日本だけ
−アジアで死刑廃止国は少数
−中国死刑多い

*事実上の死刑廃止
−死刑判決は言い渡すが死刑執行はしない。

*冤罪件数
−1973年以来、全米で111名の冤罪が証明された

*日本の死刑制度
−2004年6月現在、日本に62名の確定死刑囚
−ほとんどが強盗殺人、強盗強姦殺人(複数殺人、強盗殺人、強盗強姦殺人、誘拐殺人)
−18歳以上に死刑適用

*EVIDENCE
A/T『Q&A死刑制度の基礎知識』
−2004年4月現在、死刑廃止国6割(117カ国) 
−1973年以来、全米で111名の冤罪が証明された
−2004年6月現在、日本に62名の確定死刑囚

*公共の福祉とは
−社会の成員のすべての者の相互関係において成立するものでなければならない
・公共の福祉=社会の全員の共存共栄であり、社会連帯である

*公共の福祉と生命権の剥奪
−公共の福祉と生命権の剥奪は本来何の相関関係もない
−公共の福祉の原則によっては殺人者の生命をも奪うことはできない
・憲法31条「科刑の制約」
−法律で規定すれば国家は人の生命をも剥奪できる
→死刑合憲論の有力な根拠
−But罪刑法定主義の原則を単に表明したものであることを歴史的・比較法的に論理付け
しただけ(上記に対する反駁)

*死刑は残虐か
・憲法36条「残虐な刑罰の禁止」
−日本での死刑の執行方法は絞首刑のみ 
−執行方法いかんに求めること自体が問題のすり替え
−死刑は執行方法いかんを問わず残虐
・最高裁判所 残虐性の判断は「国民感情」によって定まる
→国民の多数が死刑は残虐であると判断する時期がくれば憲法違反となる

*死刑存置の主たる根拠
@人を殺したのだから仕方ない
A凶悪な犯罪の抑止力となっている
B国民世論の過半数が支持している
C被害者感情から必要である

*人を殺した者は殺されるべきか
・2002年度 
−793人が殺人で有罪→死刑判決12名
−単なる一つの感情(無視してもよいレベルのテーゼ)
−そのような論理を通してはならないという歴史の流れ
−人を殺さなくても死刑
−国家の裁量による

*世論はあてにならない
A/Tロバート・ピール(1820年) 
Q)世論とは、実は馬鹿げたこと、根拠の薄弱なこと、新聞記事の膨大な集積(UQ

*世論と民主主義は違う
A/Tバダンテール(元フランスの法相) 
Q)民主主義と世論調査を混同してはならない。
民主主義は世論に追従するものではない。(UQ

*世論は操作可能
−調査時期を凶悪事件が多発した年に
−死刑に対する態度は操作が可能
・世論調査 
−調査時期、質問の仕方、調査対象者、死刑に関する情報の有無に左右される

*死刑存置賛成の理由
−「自分は人を殺すことはない」と信じているから

*死刑判決に誤判の可能性

*死刑と無期懲役の境はあやふや
−同質・同態様の事件なのに、死刑と無期懲役で選択
−本来死刑と無期との客観的な区別は不可能である

*死刑には犯罪抑止力があるかどうか分からない
−死刑をなくすと凶悪犯罪が増える←科学的証明はなされていない
−死刑がない方が凶悪犯罪がすくない場合も
−死刑と終身刑・無期懲役、どっちが抑止力あるの分からない

*死刑よりも雇用や所得をあげましょう
A/Tアイザック・エーリッヒ
Q)死刑執行よりも雇用および所得の増大の方が犯罪抑止効果大(UQ

*死刑に犯罪抑止力はない
−死刑があるから殺人を止めようとするような冷静な判断が不可能な状況で凶悪犯罪が発生する

*死刑は犯罪(殺人)を助長する
−自殺するのが怖いので、他人を殺して死刑囚となり死刑を志願するものがいないとは言えない

*死刑があるため殺さなくともよい殺人が生まれる
・中国 
−一人殺して死刑なら複数殺す
・アメリカ 
−強姦殺人が多い
b/c強姦した後で相手を殺さなければ自分が逮捕される危険性が高くなる

*被害者感情と死刑存廃とは別問題
−死刑が執行されても、被害者の感情が全て解消されるわけではない
−死刑判決100人に1人
A/T原田正治(名古屋保険金連続殺人事件の被害者の兄)
Q)被害者の家族としては加害者を殺して、それでおしまいではあまりにも安易にすぎる。命の等価交換にすぎない。弟が加害者と同じ価値しかないということにであり、それは我慢できない。生きて、犯した罪に悩み、苦しみ、身悶えながら償いをまっとうして欲しい。(UQ

*死刑囚が精神障害に陥る
−長期収容からくる完全孤独状態から「死刑囚症候群」があらわれ、精神障害に陥ることもある。

*死刑確定から執行までの平均期間
−8〜10年

*犯行時における精神鑑定
・刑法39条
−犯行時において心神喪失または心身耗弱の者に対する刑が排除されている。

*終身刑は死刑より残虐であるか
・無期懲役
−10年を過ぎると仮釈放の資格が付く(刑法28条)
−死刑囚はいつ殺されるかの不安の中で生きている。
それと比較すれば処刑がない終身刑は死刑に比較して残虐とは言えない。

*終身刑を導入すれば死刑にあえて反対しない
−日弁連・宗教界・一般世論

*終身刑の問題点
@終身にわたる拘禁は人格を破壊する
A終身刑は、いわば緩慢な死刑である
B希望を失わせることは、人格形成の可能性を奪う
C終身刑は再社会化という行刑目的に反する



『日本の論点04』
A/T菊田幸一(明治大学教授)

*死刑制度に関する問題点
・死刑が宣告されても執行をしないモラトリアム
・死刑と無期懲役とのギャップが大きすぎる
・加害者の人権ばかりが主張され犯罪被害者の保護が十分でない

*死刑廃止議連の法案の問題点
@重刑罰化(死刑を廃止せずに終身刑を導入)
A釈放がないから死刑より残虐
B憲法違反の疑い(立法権による司法権の侵害)

*上記三点に対する菊田氏の反駁
@死刑と無期懲役との落差が大きく、裁判官も無期懲役を選択したくとも、苦渋の選択として死刑を言い渡すことがある。→終身刑を導入
A死刑廃止後に話し合っても遅くはない
B高度の人権的価値の観点から
憲法の定める三権分立制に反するものではない。


死刑制度
日本の論点2004 論点70−死刑制度は存続させるべきか
坂本敏夫(さかもととしお)元刑務官
「現場を見ずに廃止を叫ぶなかれ―世界に誇れる終身刑のない日本の刑罰」
死刑制度の是非
@被害者と遺族の感情論A冤罪論B国家による殺人論C欧米との比較論
死刑囚を処遇する刑務官の職務と心情
刑務官の家族の心情
死刑囚は最後まで拘置所に身を置く(一般の被告人に準じた取り扱い)
拘置所 刑務所と比べて規律が徹底していない
世間の注目を集めた凶暴凶悪な事件の犯人については有名であるだけにトラブルが起こっては大変と、腫れ物に触るといった表現がぴったりの、それは気を使った対応になる。
一日中寝転んでいても注意はしない
いつでも願い事を受け付ける
刑務官に対する暴言、暴行もお咎めなし
被告人処遇の鉄則といわれる
「裁判が確定するまでは、一般の市民と思って処遇するように」「無罪推定」
毎年1000件以上の死刑を課してもいい殺人絡みの事件のうち、死刑判決が下るのは十数件。
被害者遺族の「犯人を死刑にしてほしい」という訴えを満足させるのは稀。
死刑囚が改心するのは近くなってから。
自分の命を考えることによって初めて他人の命を奪ったことの重大性を感じる
死刑囚を生かしておくことは、無駄な時間と莫大な予算を使う。

日本の論点2004 論点70−死刑制度は存続させるべきか
菊田幸一(きくたこういち)明治大学教授
「加害者を死刑にしても遺族は癒やされない。仮釈放のない終身刑を導入せよ」
加害者を仮に死刑にしても多くの被害者感情はそれで癒されるものではない。
むしろ加害者を死ぬまで刑務所におき、自らの殺人への償いをさせるため生かしておくことのほうが現実的。
麻原彰光といえども、仮に処刑してしまえば彼は教祖様として崇められる存在になる
むしろ死刑囚のまま刑務所で生涯を過ごさせることが被害者感情に合致している


日本の論点2001 論点71−凶悪犯罪の量刑は軽すぎるか
福島瑞穂(ふくしまみずほ)弁護士
「受刑者の実態を知れば、決して「無期懲役が軽い」とはいえない」
刑法28条
「懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは、有期刑についてはその刑期の三分の一を、無期刑については10年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に出獄を許すことができる」
「第九九矯正統計年数T」(1999)」
受刑中の無期刑囚は938人、出所者の平均受刑在所期間は約21年6ヶ月
1999年4月14日、質問主意書
全国の無期刑囚は98年末で960人あまり
30年以上40人(45年以上4人、うち一人が50年以上)
他の受刑者たちとの交流がないので、拘禁性ノイローゼになる者もいる
一番長い人32年間も独居房にいる
無期懲役囚のうち、拘禁反応など、心身に異常があって治療を受けている者の数(99年4月1日)
30年以上34人(45年以上4人)
40年以上全員
仮出獄の審査をクリアすることも大変
仮出獄を決める審査は法務省系統の行政機関のひとつである地方構成保護委員会が行っている 申請ができるのは刑務所長のみ
99年6月20日付朝日新聞
「改悛の状」は問題ない。引き受ける病院や身元引受人はなかなか見つからないのが現実。法務省矯正局は、「できれば仮釈放したいが、条件がそろわない、受刑が長くなると身寄りがいなくなるなどして、さらに期間が延びてしまう」
身元引受人がいないという一点において、刑務所の外に出られない
年金の問題
冤罪とされ、無罪となった免田事件の免田さんは、現在無年金
医療の問題
診察回数は月四回程度
作業報奨金は、月に約3000円。10年以上服役しても、出るときに手元にあるのは数万円
ほとんどお金を持たせず、刑務所の外に放り出すほうが、再犯の恐れが高い